特許内容
特開2024-018648(半導体装置および半導体装置の製造方法)
「SiC半導体装置の電流印加時における積層欠陥の拡張を抑制する技術」
開発の背景
SiCパワー半導体の長期信頼性確保を困難とさせている要因の一つとして、順方向通電時における電気抵抗の増大があります。 これはSiCウエハ基板に存在する基底面転位が、エピタキシャル層(エピ層)において積層欠陥として拡張する現象が関係しています。 SiCパワー半導体業界における重要な問題点として、その解決が強く望まれています。
研技術内容とこれまでの成果
図1(a)のように基板に存在する基底面転位は、積層欠陥としてエピ層で拡張します。 図1(b)のように水素イオン注入を用いて、表面から深い位置に存在するエピ/基板界面付近に水素および点欠陥を導入します。 転位に水素もしくは点欠陥を固着させることで、その拡張を止めることを狙いとしています。 図2はダイオードに対して、長時間の電流負荷試験を施したあとのエレクトロルミネッセンス(EL)像であり、積層欠陥はEL像において暗部となります。 図2(a)に示すように水素イオン注入のないダイオードの場合、複数の箇所で暗部が確認され、積層欠陥が拡張したことが分かりますが、 一方で図2(b)に示すように水素イオン注入ありの場合、積層欠陥は観測されていないことが分かります。
特許5261324(半導体装置とその製造方法)
「ライフタイム制御機能を有しながら低リーク電流を実現した半導体装置とその製造方法」
自動車メーカーと共同で開発を行い、低リーク電流と高速スイッチングを両立するパワー半導体を実現させました。 電子線照射で生成したエネルギー的に深すぎる欠陥準位の一部をプロトン照射により導入した水素で終端させ、 浅めの欠陥準位にシフトさせる技術を開発しました。
特許6732645(固定装置およびイオン照射方法)
「半導体基板に対するマスクの位置保持をより確実にするイオン照射のための固定技術」
マスク照射儀重の適用製品
RC-IGBTは個別チップの場合に比べて1チップ化されたことにより最終製品(インバーター等)の小型化、 特性向上、低コスト化が可能となる製品です。高精度マスク照射技術により照射の不要なIGBT領域は未照射領域とし、 ダイオード領域はイオン照射によりライフタイム制御を実施することで1チップ化されたRC-IGBTの性能を向上させます。
マスク照射技術の概要
マスク照射では、メタルマスクでイオンビームを遮蔽し、照射領域を制御する。 ウエハ上のマークを使用して位置合わせを実施することで、デバイス領域ごとの打ち分けが可能です。
マスク付きウェハの固定方法
マスクとウエハはマスク保護板と固定治具、マスク保護板とマスク、ウエハホルダと固定治具、スペーサ―とウエハ、 ウエハとウエハホルダの摩擦力で固定しています。摩擦力は止めネジの締め付けトルクにより管理しています。
特許6143440(半導体装置の製造方法および基板処理システム)/特許6529914(水素プラズマ処理装置および水素プラズマ処理方法)
「n層を形成するための加速器の使用時間を短くする方法」
「製造効率の向上に資する基板搬送構成を有する水素プラズマ処理装置および水素プラズマ処理方法」
水素プラズマ処理
イオン照射を行ったウエハを加熱した状態で水素プラズマ処理を行うことにより、イオン照射で生成された欠陥に水素がトラップされ、 n+層濃度の増強効果が期待できます。
水素プラズマ処理の効果
n+層を形成するためのイオン照射技術は、イオンの通過領域のキャリア濃度が基板濃度より低くなるという問題がありましたが、 水素プラズマ処理を行うことで通過領域のキャリア濃度を増強することが出来ます。
特許6425633(半導体装置および半導体装置の製造方法)
「半導体基板上に形成されるインダクタ素子の特性を向上させる技術」
アナログ回路ブロックの低消費電力化には、オンチップインダクタのQ値を向上させることが有効です。 イオン照射によりシリコン基板を高抵抗化することで、オンチップインダクタのQ値を向上することが可能です。
特許6557134(半導体装置および半導体装置の製造方法)
「半導体基板に形成される複数の回路領域間のノイズ遮断特性の向上」
CMOS技術により微細化とワンチップ化が進み、チップ面積が縮小したことで デジタル回路ブロックからアナログ回路ブロックへノイズが伝播し、アナログ回路が誤作動する問題が発生しています。 デジタル回路ブロックとアナログ回路ブロックの間にイオン照射により抵抗層を形成することで基板アイソレーション効果を得ることができ、 製品の性能が向上します。