電子線利用サービス 電子線滅菌・殺菌

電子線滅菌の性質、原理、ほかの滅菌法との比較

電子線の性質(電子線とガンマ線の違い)

放射線を大きく分けると電磁波放射線と粒子線に大別できます。
電磁波放射線の中にガンマ線やX線などがあります。一方、粒子線の中に電子線・陽子線・イオン照射などがあります。
ガンマ線は放射性物質(コバルト60)からガンマ崩壊にて自然に放出されるものであり、電子線は人工的に加速器で作られるものとなります。 ガンマ線は電磁波の特徴を持っており透過能力が高いというのがメリットとなります。ただし、ガンマ線そのものが、滅菌や物性を変化させるわけではありません。物質に照射されると、二次的に電子が発生し、その電子が電離作用を起こし滅菌や物性変化を起こす形となります。
一方、電子線の場合は加速器で直接電子を発生させ、電子そのものを照射するので直接的に滅菌や物性変化を起こすことが可能となります。このため、ガンマ線と比較すると線量率(単位時間当たりの照射量)は5千~1万倍程度と高く、非常に短時間での処理が可能となります(例えば20kGy照射するのにかかる時間は電子線の場合は数秒、ガンマ線の場合は数時間かかります)。
このように電子線の場合は効率良く被照射物へエネルギーを与えるが故に透過力についてはガンマ線に比べ劣る形となります。メリットとデメリットが表裏一体の関係にありますが、梱包形態の自由がきけば非常にメリットを出すことが可能となります。

電離作用とは

電離作用とは電子が離れる作用となります。
物質の中の原子に電子線が入射すると原子にエネルギーが与えられ、その一部の軌道電子が放出されてしまいます(この結果、原子の電荷が全体としてプラスになることを言い、イオン化するとも言います)。
このことにより安定していた原子が不安定な原子にかわりその後の反応を引き起こします。つまり電離作用がなければ、殺菌や物性変化をもたらすことはできません。

電子線滅菌の原理

電離作用がきっかけとなり物質に様々な影響を与えます。
特に生物に与える影響としては細胞中のDNA二重螺旋構造を直接切断する直接作用と生体の水分子に作用しフリーラジカル(遊離基)を発生させ、そのフリーラジカルがDNAの損傷を引き起こす間接作用があります。
この2つの作用により生物にダメージを与え結果として菌を殺滅します。電子線及びガンマ線が生体高分子(DNA等)に損傷を与えるメカニズムはこの電離作用を利用したものとなります。

電子線滅菌と他の滅菌方法との比較

項目 電子線滅菌 ガンマ線滅菌 EOG滅菌
装置 電子加速器 放射線源の露出装置
(コバルト60)
ガス滅菌釜
材料 耐放射線性 耐放射線性 耐熱性(60℃程度)
処理方法 連続式 連続式 パッチ式
処理時間 数秒~分 数時間 数時間
処理単位 連続大量処理が可能 大量処理(<電子線滅菌) 釜容量単位
後処理 不要 不要 エアレーション・残留ガスのため
放置が必要
環境対策 なし 大量の放射性元素使用
廃棄物処理が問題
発癌性や環境汚染など規制あり

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